ブランパンのフィフティファゾムス43mm

こんにちは!アジアン食器専門店『サラヤシキ』の藤井です。画像フォルダを漁っていたら時計の画像が出てきたので、今日はそのお話しを。

実は私、時計が大好きなのです。どのくらい大好きかと言うと、10年以上毎日欠かさず時計業界のウェブニュースに目を通し、某時計店の入荷情報を毎日チェックするくらいには大好きなのです。
だからと言ってコレクションと呼べるようなものは持っていません。会社員時代に血を吐くほど頑張って手に入れたジャガールクルトのレベルソクラシック・ミディアムだけが唯一の宝物で、汗をかく夏はGショックやセイコーダイバーズを使っています。
一般市民にとって簡単に手に入るものではないのでただ指を咥えて見ているだけですが、それでも機械仕掛けの小さな世界にロマンを感じずにはいられないのです。だって憧れるだけならタダですからね。

そんな私が、かれこれ3年前くらいに清水の舞台から飛び降りかけたときの画像。これはそう、時計好きなら知る人も多い『BLANCPAIN Fifty Fathoms Bathyscaphe(ブランパン フィフティファゾムス バチスカーフ)』です!正確な値段は忘れましたが、今公式サイトで確認したところ1,518,000円でした。円安の影響もあり、かなり値上がりしている気がします。写真は恐らく阪急百貨店のブティックで試着させてもらったときのものですが、他にも高島屋や大丸でも試着させてもらった記憶があります。

このブランパンというスイスの時計ブランドは1735年に創業された世界最古の時計メーカーとされていますが、そこには様々な論争があります。経営難による休眠期間が何年もあったり、また権利を買収されてブランドが復活したりと、まるでゾンビのように生死を繰り返していることから「ゾンビブランド」と揶揄されることもあります。実はブランパンをはじめスイスの名門ブランドを次々と瀕死に追いやったのは我らが日本のセイコーで、当時機械式時計が主流だった世の中に正確で安価なクォーツ機構を開発したことがきっかけでした。これが通称『クォーツショック』と呼ばれるもので、IWCやZENITHなど名だたる名門時計ブランドが経営危機に陥ったのです。その話は長くなるのでここで止めておきましょう。

このフィフティファゾムスというシリーズは1953年にフランス海軍向けに開発された実用ダイバーズウォッチの元祖として位置づけられていますが、これもロレックスのサブマリーナとほぼ同時期だったため、どちらがホンモノの元祖かという論争があるようです。まぁ私からすればそんなことに微塵も興味はなく、ただこの時計が好きなだけですが。
ダイバーズウォッチというのは、読んで字のごとく海に潜ることを前提に作られた強靭な防水機構を備えた時計のことです。水中での視認性確保のため大きく作られるのが一般的で、近年時計業界で流行する「デカ厚ブーム」とは全く別の、本来の機能美としてのデカ厚時計なのです!※ココ重要
私は本来大きすぎる時計は好まないのですが、こういう「単にデザインではなく、歴史的な理由があって大きい」というストーリーにひどく心を動かされるのです。懐中時計をルーツに持つIWCのポルトギーゼもその類ですね。

さて本題に戻ります。私が喉から手が出るほど欲しかったブランパンのフィフティファゾムスですが、元々このシリーズの代表モデルはケース径(時計の直径)が45mmもあるのです。これは時計サイズとしてはとても大きく、屈強なアスリートや外国人俳優でもないと似合わないのが難点でした。なので私のような細腕では到底着けることすらできないのですが、このバチスカーフと言うシリーズはその代表モデルをタウンユース向けにダウンサイジングしてよりカジュアルにしたもので、サイズは43mm38mmが存在します。
数字だけ見るとたった2mmの違いですが、時計のケース径での2mmの違いはとても大きく、45mmと43mmではまるで印象が異なります。もちろんまだまだ大きな部類ですが、43mmであれば何とか腕に納めることができるギリギリのサイズなのです。

ところが、私を悩ませたのはもうひとつの38mmという存在。これが日本人の腕にフィットする絶妙な大きさで、何の違和感もなく装着することができすのです。「じゃあ38mmにすればいいじゃん」と言われそうですが、そんな簡単に決められるなら苦労はしません!さきほども書いた通り、元々その時計の持つ歴史的背景を考えると、潜水中の視認性を求めたダイバーズウォッチの機能美として、本来は大きくあるべきなのです。ただ着用した時のフィット感や実用性は38mmに軍配が上がるわけで、だから私は寝ても覚めても43mmと38mmで悩み続けました。色々なお店で試着させてもらったのは、毎回決めかねて同じお店に行き辛くなり、結果としてブティック行脚という極めて情けない理由からです。

こちらが38mmです。ちなみに腕回りは16cm。何の違和感もなく時計が収まっているのがわかります。
お店の人によると、43mmでも38mmでも回転ベゼル(フチの黒い枠部分)の太さは同じなので、その分38mmは文字盤がかなり小さく見えるとのこと。確かにそう言われるとかなり小さく見えます。とある動画では「日付窓を見るのにルーペが必要じゃないかHAHAHA~」と外国の方が揶揄して笑っていましたが、それはあながち間違いでもありません。この先老眼になったら老眼鏡を掛けないと日付が確認できなくなりそうです。
また、夜光インデックスの周りはホワイトゴールド製、つまり金なので、単純に使用している金が少なくなります。ちなみに裏面の自動巻きのローターも金でできているので、それも少し小さくなります。もちろんその分38mmの方が価格は少し安いです。2024年1月現在、公式サイトでは1,386,000円となっていますね。

パワーリザーブ(ゼンマイ駆動時間)は、43mmで120時間、38mmで100時間です。ここが凄いところ。参考までに、私のレベルソは42時間です。正直そこまで長くなくても不自由はないのですが、時計を外してから4日とか5日も動き続けるロングリザーブは技術の結晶として魅力的でもあります。もちろんレベルソみたいに手巻きで毎日カリカリ巻き上げるのもそれはそれで至高の悦びですが。
この何とも言えない文字盤のサンレイ仕上げ。グレーに鈍く光る様はいつまで見ていても飽きない美しさです。改めて、欲しい!!(心の声)

うっかり写真を見つけたせいでつい長々と書いてしまいました。
時計はロマンです。私は高級時計が好きなわけではなく、時計全般が大好きなのです。Gショックも定期的に新作をチェックしていますし、チプカシも大好きです。海外でも一瞬で現地時間に合わせられるセイコーアストロンや、最近CITIZENが力を入れている年差1秒(1年間で誤差±1秒)の化け物精度のクォーツなど、時計の持つ様々な機構を見ているとワクワクが止まりません。
高級時計を身に着けている人の中には、ただ高級であることを自慢したい層が一定数いますが、私は誰にも気づかれずにひとりでほくそ笑んでいたいタイプのオタクです。高級だから欲しいのではなく、素晴らしい芸術作品だから欲しいのです。
買いかけたブランパンはギリギリのところで幻に終わってしまいましたが、いつか頑張って絶対に手に入れます!ショッピングウィンドウに張り付いて憧れの炎を燃やし続ける日々はまだまだ続きそうです。

食品衛生法の検査を受けた安全なバッチャン焼き・セラドン焼きを販売するサラヤシキ
幻に終わったブランパンの輝き。